小林清親の木版画

昨日の美の巨人たちは、最期の浮世絵師と言われた小林清親の「猫と提灯」でした。
有名な版画なので、存在は知っていたのですが、あれほど超絶技巧が使われていたなんて、驚きでした。
というか、提灯の中にネズミが隠れている事も気づいていませんでした。

リアルな写実性の西洋油絵に対抗しようとする原画を描いた小林清親も凄いですが・・・それを版画で実現する彫師と刷師の技も凄いです。
この作品を仕上げるために、35回も刷りを重ねなければならない事は、作品集の記事で知っていたのですけど・・・猫の毛並みを再現するためだったとは・・・・通常の版画は7~8回刷り重ねるだけと言われていますので・・・そこまでこだわるのか!という感じですね。

小林清親といえば、「光線画」と言われる光と影を巧みに表現した夜の風景の版画が有名ですけど・・・あれって、文明開化でガス灯の明るさに感激して、それを表現しようとしたのが最初だと思います。
そういえば、「猫と提灯」でも、提灯が灯っているように見えます・・・光線画の一種なのでしょうか?・・・ネズミが隠れていて、横倒しになった提灯なのに、中にローソクが灯っているのは不自然な気がします。
この点でも、従来の浮世絵から脱皮して、文明開化の新しい版画を目指していたように感じます。

ちなみに、小林清親の古い日本の光景を描いた木版画は、川瀬巴水の作品にも影響を与えていると思うのですけど・・・個人的には、川瀬巴水の方が好みです。
ここいらへんは、明治に活躍した小林清親と、昭和に活躍した川瀬巴水の違いで・・・新しい文明開化の風景を描こうとした小林清親に対して、川瀬巴水は消えゆく日本の風景を描こうとしているからだと思います。
だから、なんとなく、川瀬巴水の作品は郷愁を誘う雰囲気があるのですよね。

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小林清親 文明開化の光と影をみつめて」 青幻舎

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裏表紙に「猫と提灯」が印刷されています

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35回刷りの説明ページ