吉田博

先ほど、NHK教育テレビ日曜美術館の再放送で、吉田博の版画を紹介していました。
なんでも、ダイアナ妃のお気に入りだったとか・・・日本より、海外の方が知名度は高いそうです。

なにを隠そう、私も前回の放送で、初めて吉田博の名前を知りました。
その時は、パッと見た感じ、川瀬巴水に似ているな・・・という印象でした。

もっとも、川瀬巴水と違って吉田博は、元絵だけでなく、彫や刷りも自分で行っているそうです。
そのため、ネズミ版という灰色の版木を何枚も多用したり、独自の手法を色々と使う事が可能となったみたいです。
これにより、微妙なグラデーション等が表現されて、独自の空気感が感じられるのです。

おそらく、自分の表現したい絵に強いこだわりがあったからこそ、それを実現するために、あれこれ試行錯誤して、色々な手法を編み出したのでしょう。

元々、西洋画の風景画をやっていたということで、風景画が良いのですが・・・特に、山を描いたものと水を描いたものが素晴らしいです。
登山が好きだったという事で、山に登った時に感じられる雰囲気が表現されているし・・・
水の表現にもこだわりがあったそうで、渓流の細かい波まで掘るので腕を痛めてしまったという逸話がありますが・・・波とか水鏡の表現が素晴らしいです。

これにたいして、街中の風景は、川瀬巴水の方が優れているように思われます。
確か、川瀬巴水は、関東大震災で失われた街中の景観を嘆き、後世にその景観を残したいという思いがあったそうで・・・そのため、川瀬巴水の版画は、懐かしさを感じさせる物が多いのだと思います。

そういえば、吉田博の方は、高山の風景など、普通の人が簡単に見れない景色を、見させてあげたい・・・と言っていたとか・・・
両者の違いは、その版画に対する想いなのかもしれませんね。

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雄大な自然を描いた国際版画家 「吉田博 木版画展」