巴水と広重

今日のテレ東の「美の巨人たち」は川瀬巴水の「東京二十景」を取り上げていました。
かの歌川広重の「名所江戸百景」から70年後に描かれた版画になります。

「名所江戸百景」は安政の大地震後に描かれ、一方「東京二十景」は関東大震災後に描かれたというのが共通していて・・・両者とも、現在の街の光景が失われる前に描いて残しておこうという意思があったとか。
ちなみに、番組によれば、広重は賑やかな復興を描き、巴水は静かな復興を描いているそうです。

「名所江戸百景」から僅か70年後というのですが・・・その間に、かなり東京の街は変わったはず・・・でも、巴水の描く版画は、新しい光景というよりは、70年前から変わらない光景を描いている事が多いですね。
私は、巴水はわざとノスタルジーを感じさせるように描いているのではないか?なんて思っています。

ちなみに、広重はタイトル通りに名所を描いているのに、巴水は名所ではない、何気ない風景を描いている事が多いのは、そこに暮らす人々の営みを描きたかったのではないか?と、番組では語っていました。

そういえば、番組で、浮世絵には無いザラ摺りという技を紹介していました。
何も掘っていない版木を粗目の馬連で摺って、絵にざらついた感じを出すそうですが・・・こんなところも、使い古したような印象で・・・ノスタルジーを感じさせるためではないでしょうか?
番組では、災害から逞しく蘇ろうとする町と人々の姿…“涙で滲んだ東京”を描いた、という風に語っていました。

ちなみに、我が家には川瀬巴水の版画が1枚だけあるので・・・気になって調べてみたら、やはりザラ摺り加工がされていました・・・もちろん、災害復興を描いた江戸二十景ではありません。

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「新潟碇町」 川瀬巴水
我が家にある唯一の巴水の版画・・・一応、初版です。

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「名所江戸百景」 一龍齋(歌川)広重 集英社

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川瀬巴水展」図録