名所江戸百景は好きなシリーズなので、興味深く拝見しました。
私も、絵を描くときに参考にする事がある、手前に物を大きく描く大胆な構図は、近像型というそうで・・・従来の浮世絵と異なり、たて型の紙に刷るため、絵に奥行感を出す必要性から取り入れたそうです。
この構図、ゴッホなどの欧米の画家に影響を与えたのですが・・・そもそも、遠近法自体は洋画から日本にもたらされたのですから・・・こんなところにも、海外から入ってきた物を独自に発展させる日本人らしさが表れていますね。
いわゆる名所絵は、観光ガイドブック的な役割だったのですが・・・この名所江戸百景は、江戸の庶民を元気づけるために描いたとか。
そのため、「水道橋駿河台」の巨大な鯉のぼりは、それだけ武家屋敷が復興した事を表していて・・・「四ツ谷内藤新宿」に描かれた馬の足元に馬糞が落ちているのは、それだけ馬が肥えるようになった事を表しているそうです。
今まで、現在の東京の風景と名所江戸百景に描かれている風景を重ね合わして、楽しんでいたのですが・・・そんな意味が込められているとは知りませんでした。
地震から復興した光景が、今に繋がっているのですね。
で、師匠の歌川豊広につけて貰った名前が歌川広重だというのですが・・・実際問題、本人が名乗っていたのは、一立斎広重だそうで・・・以前、広重の画集を探していた時に、一立斎広重と書いてあって、戸惑った事があります。
「豪華版・浮世絵版画 名所江戸百景」 一立斎広重/渋井清 集英社