推定無罪

ニュースによると、愛知県警が設置した、いわゆる「あの人、逮捕されたらいいよ」の痴漢撲滅ポスターが撤去されることになったそうです。
ポスターの内容について、裁判で刑が確定されていない容疑者を犯罪者扱いしている、という批判が色々な方面から、相次いだためだそうです。

ちなみに、愛知県警は「痴漢の行為者に思いとどまって欲しい、という思いで作った。」という事ですが・・・警察のくせに推定無罪(裁判で有罪が確定するまでは無罪と推定される)の原則を無視しているという指摘がされています。
結局、この騒ぎのため、愛知県警の意図する痴漢の行為者よりも、痴漢冤罪の可能性や推定無罪という概念のアピールになってしまったのが、興味深いところです。

そういえば、先日NHKで放送された「逆・転・人・生 えん罪、奇跡の逆転無罪判決」で、コンビニのドアのガラスに残った指紋によって、強盗犯として逮捕された人を取り上げていました。
あの人の警察での扱われ方をみれば・・・警察は推定無罪ではなく、むしろ推定有罪に近い意識でいるというのが判ります。
だから、愛知県警もポスター作製において、無意識のうちに本音が表れてしまったのかもしれません。

ちなみに、あのポスターではLINEのようなSNS上での女性同士のやりとりが載っていますが・・・警察に限らず、一般の人も、逮捕されたイコール犯罪者という勘違いをする人が多いように思います。

印象に残っているのは、和歌山毒物カレー事件で逮捕された林眞須美容疑者の刑が確定される以前に、自宅が「人殺し」などペンキで落書きされ、挙句に放火で全焼してしまった事です。
今でも、逮捕された未成年が、ネットで実名を晒されたりしますが・・・推定無罪を無視しているうえに、罰をあたえる権利を有するのは国であって、一般人にはその権利がない事も認識する必要があります。
ちなみに、被害者にも罰を与える権利がなく、報復や仇討ちを行えば逮捕されます。

このような傾向があるのは、報道機関も推定無罪を無視する傾向がある影響かもしれません。
こちらでは、松本サリン事件における、通報者に対する報道なんかが印象に残っています。

そういった意味では、今回のポスターの騒ぎを報道する時に、報道機関も推定無罪という概念を再認識したと思うし・・・ポスターの表現を見て、一般人も、SNSで間違った噂話をしたりしなくなりそうで・・・かえって、良かった事のように思えます。