カラヴァッジョ

昨日、NHKにて「カラヴァッジョ 光と闇のエクスタシー~ヤマザキマリ北村一輝のイタリア」という、ちょっと長いタイトルの番組をやっていました。
国立西洋美術館で開催している「カラヴァッジョ展」については、先日も書きましたけど、とても感銘を受けたので、この番組も興味深く拝見しました。

番組は漫画「テルマエ・ロマニ」の作者であるヤマザキマリと映画化されたその作品に出演した俳優の北村一輝による案内で進行します。
なんでも、ヤマザキマリさんは、17歳でイタリアに絵画修行をしたそうで、多くの画家の作品を見てきたのですが一番惹かれたのがカラヴァッジョだったそうです。

私がカラヴァッジョ展で強い印象を受けたのは果物などの存在感なのですが・・・番組も、「果物籠を持つ少年」の果物の超絶技巧から始まります。
やはり、「つかみ」としては、これが一番強烈だからでしょうか?

でも、番組の主題はタイトルの通り、光と闇が引き起こす劇的な世界です。
まんべんなく光をあてることが調和を表しているのに対して、一か所に光をあてることは対立や対比を表すことになるそうです。
そして、それまでの絵画は対象全体に光が当たったように描いていたことから、カラヴァッジョの絵は、芸術に革命を起こした、と言われるそうです。

そんなこともあり、番組によると、ユーロになる前のイタリアの最高額の紙幣(10万リラ?)の肖像画は、ダヴィンチ等のイタリアを代表する偉大な芸術家を差し置いて、カラヴァッジョが描かれていたそうです。
なお、そこには、今回のカラヴァッジョ展にも出展されていた「女占い師」も描かれていました。
(そういえば、「女占い師」は代表作の一つのくせに、光と闇を強調していないような・・・)

そして、今回のカラヴァッジョ展で初公開された「法悦のマグダラのマリア」・・・なんでも、カラヴァッジョが最後まで手放そうとせず、作品を載せた船が出港したのを歩いて追いかけたそうです。
展覧会で見た時は、そんなに感銘を受けなかったのですが・・・青ざめた唇や土気色の肌など、死にかけている様子を描いているそうで、死んでも良いから自由になりたい、というカラヴァッジョの思いが表れているようです。

ちなみに、番組では髑髏が描かれているのも、死をイメージさせるためと言っていましたが・・・マグダラのマリアの絵では髑髏を描くのがお決まりなので、ちょっと違う気も・・・一般的に、マグダラのマリアの髑髏は「改悛」を意味していると言われています。

ヤマザキマリさんは、突出した作品を生み出している人は人格も尋常でない、世間に足並みを揃えるのが難しい人だった、と話していましたが・・・あれだけの作品を、下書きもせずに一気呵成に描いたというのは、私のような凡人には見えない世界が見えていたように思います。
だから、凡人に合わせる事が出来なかったのではないでしょうか。