ギブソン・カラマズー工場の末期について

一昨日は、カラマズー工場の末期に作られた、フライングVエクスプローラー、ファイヤーバードを紹介しました。
カラマズー工場の末期に作られたギターには、イレギュラーな物で魂が宿ったような感じがする良いギターが多いように思います。

ギブソンは1975年にテネシー州ナッシュビルに工場を作り、ソリッド・ボディやセミアコ等の製造を行うようになりました。
しかし、アコースティック・ギターフルアコのようなギターは、引き続きミシガン州のカラマズー工場で製造されていました。
また、現在のカスタムショップの前身のリペア&カスタムオーダー部門もカラマズーにありました。
このため、ソリッド・ボディやセミアコでも特殊な仕様の物はカラマズー製もあります。
そして、1984年にカラマズー工場が閉鎖され、すべての生産はナッシュビルに移っています。

若い職人はナッシュビルに移ったのですが、年配の職人の多くは閉鎖までカラマズーに残って、そのまま辞めたそうです。
そういえば、カラマズーに残った職人の一部がヘリテイジ社を作った事は有名ですね。

おそらく、カラマズー工場の閉鎖が決まっていたため、レフトオーバー・パーツなど大量に保管してあった材料を使って、職人の自由にギターが製造されたのでしょう。
そのため、他のモデル用の指板とかも流用したりしたのでしょう。
そういえば、マイケル・シェンカー等の使用で有名なブロック・ポジションマークのフライングVなんていうのもありましたね。

当時の写真を見ると、カラマズー工場では、年配の職人が作業台で黙々とギターを製作しているのに対して、ナッシュビル工場ではオートメーション化されたコンベアーシステムで、ヘッドフォンをした若者がギターを製作していました。
偏見はいけないと思いますが、職人の技量の違いが、ナッシュビル工場製とカラマズー工場製に表れているように思います。

そういえば、1970年代に日本のギター・メーカーがカラマズー工場を視察に訪れた時、カラマズー工場の職人が木材をどんどん捨てているの見て、びっくりしたそうです。
なんでも、仕入れた木材のうち、8割は質が悪いという理由で捨てていたそうです。
今から思うと、現在は入手困難なホンジュラスマホガニーとかハード・メイプルなんかだったのでしょう。
だから、工場閉鎖の時に残っていた木材も、かなり質の良い物だったと思います。