エルンスト

先日、マグリットのことを書きましたが、マグリットに影響を与えたの一人がエルンストです。
以前も書きましたが、エルンストは私の好きな画家です。

マグリットの作品は、実物を見てもインパクトがあまり無いと思うのですが・・・
これに対して、エルンストの実物を見ると、きらめくような才能に圧倒されます。

ちょうど、モーツアルトの曲を聴くと天才だなぁと思うように、エルンストの作品を見ると天才だなぁと思います。

そういえば、エルンストは、ナチスドイツから逃れるため列車で国外へ亡命する途中、検問で捕まってしまったのですが・・・
自分は芸術家だと主張して、製作途中の「雨後のヨーロッパ2」等の作品を見せたら、ナチスの将校が感激して通してくれた、なんて逸話もあります。

エルンストは多作で、その作品は多岐にわたりますが・・・
特に好きなのは「雨後のヨーロッパ2」のようなデカルコマニー技法を使った一連の作品です。
でも、「聖アントニウスの誘惑」のように筆による作品も素晴らしいし、「非ユークリッド的ハエの飛行に悩ませる若い男」のような抽象画のような作品も素晴らしいです。
そして、単なるコラージュによる作品にも、非凡な才能が感じられます。

そういえば、ホテルのベッドの前にあった羽目板の木目にインスパイアされて絵を描いたのが、後にフロッタージュ技法となったそうですが・・・
木目が人の形に見えるなんていうことは、大抵の人もあると思うのですが、そこから奇妙な生き物等を描きだすなんて感性が凄いです。

エルンストの作品は、このように自然の物や偶然による物からインスパイアされて、人の想像を超えた作品を作り上げている事が多いのですが・・・なんとなく自然と人類のコラボレーションといった感じがします。
題材に選ばれものが鳥や森とか荒野のように、自然の影響があったようにも思えます。
感覚で描く画家と頭で描く画家という面で見れば、素材から受けた感覚を元に頭で試行錯誤して描いているのではないでしょうか?

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エルンスト展の図録

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別のエルンスト展の図録

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「エルンスト」 パルコ美術新書 ローター・フィッシャー著 宮下誠訳 PARCO出版