メイプル

マホガニーやローズウッドの話をしてきたので、今日は、やはりギター用の木材として代表的なメイプルについて書きます。
メイプルは別に希少材ではありませんが、フレイム(杢)の入ったハードメイプルとなると、希少材と言っても良いと思います。

ソフトメイプルにはフレイムが入った物が多いので、最近のレスポールのトップ材はほとんどソフトメイプルになってしまいました。
名前の通りソフトメイプルは柔らかいので、ハードメイプルとは微妙に音の違いがあります。
もっとも、ヴィンテージに使われていたハードメイプルはギブソン社があったミシガン州の近くで採れた平原育ちの軽い物だったそうで、現在の山育ちの重いハードメイプルとも音が違うと言います。

元々、フレイムの入ったハードメイプルはヴァイオリン等のサイド&バック材として使用されていました。
その流れから、ギブソンの原点ともいえるフラット・マンドリンやアーチトップ・ギターのサイド&バック材でも使われています。

だから、フレイムメイプルの存在はポピュラーだったはずなので、サンバースト・レスポールが登場した時、フレイムを見た人が気味悪がって不良品だとクレームをつけた、という話を聞いた事がありますが、ちょっと眉つばな気がします。

昨日書いたハカランダもそうですが、このような都市伝説的な話がいくつかあります。
例えば、フレックと呼ばれる茶色の短い筋はハードメイプルにしか現れないという話がありますが・・・
確率は少ないですけど、ソフトメイプルにも現れます。

また、ハードメイプルのフレイムは見る角度によって見えなくなるという話もありますが・・・
強烈なフレイムが入った物は、見る角度を変えてもフレイムの表情が変わるだけで、見えなくなる事はありません。
但し、強烈なフレイム入ったハードメイプルはほとんど存在しませんが・・・

似たような話では、ソフトメイプルは見る角度を変えてもフレイムの表情が変わらないという話もありますが・・・
ソフトメイプルでも、フレイムの表情は変わります。
これは、ポール・リード・スミスが始めたというフレイムを強調する着色方法から、勘違いしたものだと思います。
つまり、最初に染料で着色し杢に色がしみこんだら、一旦表面を軽くサンディングして杢以外の色を落とし、再度着色する方法です。
この方法で着色された物は、見る角度を変えても、ほとんどフレイムの表情は変わりません。

あと、オールドのレスポールの多くはプレーントップだったというのも、怪しい気がします。
数は少ないですけど(30本位かな)、私の見た物は、見る角度によってうっすらと現れる程度のフレイムはありましたが、すべてフレイムが入っていました。
ブックマッチだけでなく、わざわざ左右のフレイムを合わせるために似た材を使ったりしている物もあるので、フレイムメイプルを使う仕様だったように思えます。
もちろん、当時もフレイムの入ったハードメイプルの入手は困難だったので、プレーントップがあってもおかしくないですが・・・

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戦前のギブソンヴィオラのバック

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ポール・リード・スミス ArtistⅡ
表面のインディゴ・カラーが退色して、杢に染料が残っています。