1984

昨日は、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」を紹介しました。
この小説では1970年に冷凍睡眠や文化女中器(ハイヤード・ガール)というロボットが存在することになっています。

昔の近未来を描いたSF小説を読むと、科学技術の発達の速度を過大評価しているのが多いです。
もし、そんな風に発達していたら、現在(2015年)には、宇宙旅行やタイムトラベル、そしてアトムのような人間型ロボットなんかが登場していたはずです。
(ちなみに、アトムは2003年誕生の設定だそうです)

これは、当時の科学技術の発達のスピードが速かったからで、、そのままのスピードで発達すると考えたからです。

当時の発達のスピードがいかに速かったかというと・・・
例えば、ライト兄弟1903年の年末に初飛行したのですが、その10年後の1914年に始まった第一次世界大戦では、戦闘機による空中戦が繰り広げられました。
1939年に始まった第二次世界大戦ではジェット戦闘機やロケット戦闘機が登場しています。
始めての人工衛星スプートニクが飛んだのが1957年で、ガガーリンの有人宇宙飛行が1961年です。
そして、1969年にはアポロ11号が月面着陸をしています。

なぜ、この当時の発達のスピードが速かったかというと、やはり戦争や冷戦があったからだと思います。
開発の予算は青天井だし、科学者たちも国の存亡がかかっているので、必死に研究開発に取り組んだからでしょう。
その代わり、「欲しがりません勝つまでは」といった感じで、国民生活は犠牲になっていたのです。
その後、米ソなどでは軍事費の高騰から国民の不満が高まり、軍縮の時代になりました。
だから、もしあのまま軍拡の時代が続いていたら、昔のSF作家の想像通り科学は進歩していたかもしれません。
そして、市民生活はもっと悲惨になっていたでしょう。

もちろん、科学技術の発達による恩恵を市民生活も受けているので、一概に悪いとは言えないのですけど・・・
やはり、当時は異常な状況だったと思います。

あと、当時のSF作家が良く描いたのが、強大なメイン・コンピュータによる支配です。
当時はメインフレームのコンピュータに端末を接続して使っていたから、そんな風になると想像したのだと思うのですが・・・結局は、パソコンが普及します。
これは、みんな自分だけの自由に使えるコンピュータが欲しくなったためで、ある意味、中央集権から個人の尊重へ時代が移ったからと言えるでしょう。

これを象徴するのが、ジョージ・オーウェル全体主義を描いた小説「1984年」をモチーフとして、1984年のスパーボウルで流されたアップルの有名なCM「1984」です。
このCMでは、「1984年」の独裁者?ビック・ブラザーをビック・ブルーに置き換えています。
そして、タンクトップで赤いショートパンツの女性が、警備員を振り切って集会場に駆け込んできてビックブルーの顔が映ったスクリーンにハンマーを叩きつけます。
白煙が上がって、聴衆が煙に包まれたときに、マッキントッシュの登場のテロップが流れます。
Iロゴが青い事からIBMはビックブルーと呼ばれていて、赤いショートパンツの女性はアップルを意味しています。
ちなみに、このCMの監督は「ブレード・ランナー」等で有名なリドリー・スコットなんですよね。

少なくとも、ジョージ・オーウェルの「1984年」の予想が外れたのは良かったです。

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1984年」 ジョージ・オーウェル著 新庄哲夫訳 ハヤカワ文庫NV