夏への扉

この前、広瀬正の「マイナス・ゼロ」とジャック・フィニイの「ふりだしに戻る」について書きました。
今日は、タイムトラベルの古典的名作であるロバート・A・ハインラインの「夏への扉」です。

「マイナス・ゼロ」と「ふりだしに戻る」は1970年の発刊ですが、「夏への扉」は1957年に発刊されています。
そして、物語の舞台が1970年で、近未来として描かれています。
さらに、主人公が冷凍睡眠になって目覚めるのが2,000年です。
そして、未完成状態のタイムマシンで1970年に戻ってくるのです。
近未来を描いているので、「マイナス・ゼロ」や「ふりだしに戻る」のように、詳細に描かれた過去によるノスタルジアはありませんがロマンあふれる作品です。
というか、この作品の雰囲気自体が1950年代の希望にあふれたアメリカを感じさせてくれて、ノスタルジックですね。

さて、舞台となった1970年も2,000年も、今となっては過去となってしまいました。
もちろん、冷凍睡眠もタイムマシンも未だ実現されていません。
主人公が開発した、文化女中器(ハイヤード・ガール)というロボットも未だ登場していません。
あるのは、お掃除ロボットだけです。

主人公が住んでいる家は12も外へ通じる扉があり、冬になると雪に閉じ込められてしまうのですが・・・
主人公の飼い猫の護民官ペトロニウス(ピート)が、どこかに夏へ通じる扉があると信じていて、扉をひとつずつ開けるように要求するそうです。
そして、主人公自身が何もかも上手く行かなくなったとき、いわば「夏への扉」を探して、色々チャレンジして最後にハッピー・エンドになるのです。

昨日書いたリンカーンもそうですが、どこかに夏への扉があると信じて、諦めずにチャレンジすることが大事なのですね。

君の決心が本当に固いものなら、
もうすでに希望の半分は実現している。
夢を実現させるのだという強い決意こそが、
何にもまして重要であることを
決して忘れてはならない。
- エイブラハム・リンカーン -