パパラギ

昨日は、死海文書に関する迷著を2冊紹介しました。
この2冊は当時としても、そんな説もあるんだ?というような感じで読んでいたので、真相が判明しても別に驚かなかったのですが・・・・
真相が判明して、驚いたのが「パパラギ」という本です。

この「パパラギ」という本は、結構有名なので、御存知の方も多いのではないでしょうか?
副題に「はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集」とあるように、サモアの酋長がヨーロッパを旅行した感想をまとめたとされる、文明批判の本です。

昔、環境保護関係の書物で、よく引用されていたので、興味を持って購入してみました。
で、なるほど未開の人の目には、文明社会はこのように映っているのか、と感心しました。

でも、後に明らかになりましたが、この本はツイアビの演説集ではなくて、1920年にドイツで発刊したエーリッヒ・ショイルマンによる創作だったというのです。
どうやら、エーリッヒ・ショイルマンサモアで1年間過ごした経験を元にこの本を書いたそうで、ツイアビというのもサモア語で酋長という意味だそうです。
当時の本当の酋長は、文明の影響を受けてキリスト教に改宗していたそうで、ヨーロッパへ旅行したことはないそうです。

その事実を知った時は、「えっ、うそ~」という感じで驚いてしまいました。
(文章の不自然さ等から、気づいていた人も多かったようですが・・・)

そして、文明批判の言葉には違いが無いのですが、未開の人の目を通したのではないとなると、有難味が薄れてしまいました。
それは、そもそもパパラギの本の主張する文明批判に納得していなかったという事もあるからだと思います。

以前も書きましたが、私は。現在は昔よりも良い世界になっていると考えています。
もちろん、何もかも良くなっている訳ではなくて、色々な問題はあるのですが・・・
これは、過去から現在までの大勢の人が、より良い世界を作ろうと努力してきた結果だと思っています。

それに、サモアのような常夏の環境よりは、日本のような季節により寒暖のある方が趣きがあって好きです。
同様に、人生も平たんなものよりも、山あり谷ありの方が面白いと考えています。
だから、私はパパラギに出てくるサモアの暮らしも良いとは思いません。

もっとも、パパラギに述べられているように、文明人はサモアより自分たちの暮らしの方が優れていると考えているが実は違う、という主張は判ります。
そもそも、どちらの暮らしが良いとか悪いかといった考え自体、あまり意味が無いですよね。

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パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集」 岡崎照男訳 立風書房