仏教経済学

ここのところ、イスラム社会の経済について書いてきました。

そこで、思い出したのが、仏教経済学という言葉です。
提唱したのはE・F・シューマッハという人で、この人はケインズ門下、それもケインズの後継の一人とも目されていたそうです。
それが、ビルマやインドの経済顧問として現地へ赴き、そこの人々の暮らしから、それまでの資本主義経済に疑問を持ったそうです。

実は、私は環境問題と経済の関係に興味を持って、通信教育で大学経済学部の勉強をしました。
そして、卒業も近づいたころ、食糧問題を調べていて、シューマッハの事を知りました。
実は、環境経済学とかもあったのですが、シューマッハの名は通常の授業カリキュラムに出てこなくて、最初はシューマッハ?F1レーサー?なんて感じでした。
そして、名著「スモール・イズ・ビューティフル」を読んだのですが、私の求めていた答えに近く、通信教育で経済を学んだ中で、一番の収穫だったかもしれません。

例えば、私が調べていた食糧問題に関して、「人間は工業なしでも生きられるが、農業がなければ生きられない」といって、農業が主で、そのベースでなければ工業は成り立たないと言っています。
言われてみれば当たり前の事なのですが、なるほどと思いました。
おそらく、昨今のTPP交渉とか日本の農業行政をみると、多くの政治家もこの当たり前の事を本当に理解していないように思えます。

仏教経済学では、仏教徒の質素で足りる事を知る生き方を知り、「おやじの時代のぜいたく品が今ではみんな必需品」というような経済成長を目指す資本主義を批判しています。
この「スモール・イズ・ビューティフル」は1973年の発売ですが、当時の日本は高度成長期、「大きいことはいいことだ(山本直純)」のように、まったく逆方向へ向かっていましたね。

この本のなかでも、印象的なのが、「ある社会が享受する余暇の量は、その社会が使っている省力機械の量に反比例する」という法則です。
確かに、便利な世の中になりましたが、余計な事が増えて人間的なゆとりが無くなったような気がします。

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「スモール・イズ・ビューティフル 人間中心の経済学」
E・F・シューマッハ著 小島慶三・酒井懋訳 講談社学術文庫
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「スモール・イズ・ビューティフル再論」 E・F・シューマッハ著 酒井懋訳 講談社学術文庫