ジョン・ラセター氏の講演

先日、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズの「ベイマックス」が、スタジオ・ジブリの「かぐや姫の物語」をおさえて、アカデミー長編アニメ映画賞を受賞しました。
生憎、私は両方の作品とも、未だ見ていませんけど・・・

今から20年以上前に、ベイ・マックスのプロデュューサーでもあるジョン・ラセター氏の講演を聞いたことがあります。

当時、私は映像関係の仕事をしていて、新しいCGシステムを導入するという話が持ち上がっていました。
 上司「アメリカでCGの祭典SIGGRAPHが開催されるから、どんなシステムが良いか視察してきなさい」
 私「え~、英語ができないから、嫌です。」
 上司「取引先のベンダーも行くから心配しなくても大丈夫だよ」
 私「う~ん、気が進まないなぁ」
 上司「今年の開催地はラスベガスなんだけどな・・・」
 私「行きます、ぜひ行かせてください」
 上司「オイオイ」
といった感じで、ラスベガスに1週間ほど行ってきました。

このSIGGRAPHでは、ヴァーチャル・リアリティで凄く盛り上がっていたのですが・・・
いくつか聴いた講演では、当時ピクサーでLuxo Jr.の続編を作成中のラセター氏の講演とターミネーター2を製作中のILMの方の二つが印象に残りました。
ILMの方は、モーフィングとか使って、いかに実写と合成して違和感のないCGを作るか、といったものでした。
一方、ラセター氏はCGで出来た無機質のキャラクターを、いかに生きているように見せるかというものでした。
この講演の中で、ラセター氏はチャップリンの映画(確か黄金狂時代)の中で、パンとフォークでタップダンスを踊っているように見せた動きなんかとともに、古いディズニー映画のアニメーションの動きを紹介していました。

実は、元々ラセター氏はディズニーに勤めていたのですが、3次元CGの可能性を主張して、セル画による2次元のアニメにこだわる会社から、追い出されたのです。
そして、ジョージ・ルーカスILMに拾われてピクサーを作ったのです。
だから、ディズニーに対しては色んな思いがあったのだと思うのですけど、講演では、ディズニー・アニメの素晴らしさを語っていたことが印象的でした。

その後、ディズニーの2次元アニメが衰退した頃、ピクサーは「トイ・ストーリー」等でヒットを飛ばしていました。
そして、三顧の礼を持ってラセター氏はディズニーに迎えられたのです。
これもラセター氏の人柄と情熱によるものでしょう。
その後の、ディズニーの3次元CGアニメーションの盛り上がりは、みなさんも御存知の通りです。

なお、ラセター氏は宮崎駿監督の大ファンで、アメリカでの公開に尽力しています。

そうそう、その時のSIGGRAPH視察は実り多きものでしたが、その分、お金はスロットマシンへ消えていきました。