リバイバル69

映画「リバイバル69~伝説のロックフェス」を見てきました。
1969年に開催された「トロント・ロックンロール・リバイバル」フェスティバルの模様を収めた記録映画かと思っていたら、ちょっと違っていて・・・

NHKプロジェクトXが復活するという話がありますが、フェスティバル開催のプロジェクトX的な内容です。
フェスティバルの開催への試行錯誤やフェスティバルの最中のトラブル等が主題で、演奏の模様なんかは少なく、関わった多くの人のインタヴューやマンガを使った状況説明が多い内容です。

 

そもそものフェスティバルの企画は、1950年代のロックンロールのパイオニア達を集めてコンサートを開くというものでした。
しかしチケットは売れず、目玉として人気絶頂のドアーズに参加依頼したら・・・直前にジム・モリソンがライヴ中に猥褻物陳列をした罪で逮捕されるというアクシデントがあり(結局出演には間に合った)、チケット売り上げは伸びず。


今ではビッグネームのシカゴやアリスクーパーも参加していましたが・・・当時シカゴはシカゴ・トランジット・オーソリティという名称の新鋭バンドで観客はホーンセクションのあるバンドは初めて見る状況だし、無名のアリスクーパーに至ってはジーン・ヴィンセントにバックバンドがいなかったので、バックバンドをする代わりにバンド単独でも出演する事になったとか。
そういえば、チャック・ベリーのバックバンドも地元のバンド「ニュークリアス」が急遽つとめたが、事前の打ち合わせもなく曲を知らない状態で必死に演奏したそうです。

 

結局、チケットを売るため、ジョンレノンとオノヨーコにフェスティバルのMCを依頼することに・・・電話を受けたジョンはフェスティバルの参加メンバーを聴いて、ビートルズがライヴ活動から遠ざかっていた欲求不満もあり、MCではなく急遽メンバーを集めてバンド演奏として参加する事になります。
そういえば、これまでジョンへの出演依頼は前日だったと言われていましたが・・・数日前だったようです。
もっとも、出発当日、急遽結成されたプラスティック・オノ・バンドの一員のエリック・クラプトンが寝坊したり、ジョンも気乗りしなくなり参加しないで花を贈るとか言い出したりして、周りが説得したそうです。
結局、スタッフがクラプトン宅に迎えに行って、クラプトンが空港に向かっているという事を聞き、ジョンも空港に向かったそうです。

 

また、このコンサートのプラスティック・オノ・バンドの演奏を収めたビデオ「スィート・トロント」の頭の部分はバイク集団がハイウェイを突っ走る映像で、意味不明でしたが・・・フェスティバルのプロモーターが資金が無く、地元のバイク集団のボスから援助を受けていた関係から、飛行場から会場までジョンの車の先導を80台のバイカーに依頼したそうです。
ちなみに、ジョンレノンが参加すると聞いて、急遽撮影クルーもフェスティバルの全貌を記録する事にしたそうで、メインカメラマンは会場の撮影担当だったので、若い女性スタッフがバイクの後ろに乗せてもらって撮影したそうです。
(オルタモントの悲劇を知っているので、今から考えるとかなり危険に思えます)

 

そんなこんなで、ジョン・レノンが参加することをラジオで聞いた大勢の聴衆が会場に駆けつけフェスティバルは成功したし、歴史的に貴重な映像も残されたのですが・・・奇跡といっても良いほど綱渡り状態だったようです。
意外なことにコンサートの前半は、往年のロックンロール・レジェント達がかなり熱演していて(おそらくスタジアム規模での大観衆を前にした演奏は初めてのため)フェスティバルは盛り上がっていました。

 

さて、肝心のプラスティック・オノ・バンド自体の演奏はアルバム「平和への祈りをこめて・ライヴ・ピース・イン・トロント1969」で聴けますが・・・初めてこのアルバムを聴いたときは、オノヨーコの金切り声のヴォーカルやギターのフィードバック演奏で、奇抜な印象を受けました。
しかし、トロントへ向かう飛行機の中で初めて顔合わせしてリハーサルしただけだったようで、演奏が不十分なのも理解できました。
映画ではプラスティック・オノ・バンドのドラムスだったアランホワイトがインタヴューで、オノヨーコのヴォーカルはベトナム戦争を意識していたなんて、フォローしていますが・・・どうやら、直前のアリスクーパーが未来のロックを意識したというアバンギャルドなステージだったので、その影響もあって前衛的な演奏だったのかと合点がいきました。
プラスティック・オノ・バンドの演奏だけ視て、コンサートの全貌が判らないと、理解しづらいところです。


フィードバックはジョンだけでなく、クラプトンの3PUレスポール・カスタムやクラウス・フォアマンのプレべもアンプの前に置いてフィードバックさせていましたが・・・やはりホロウ構造のカジノがハウリングしやすいみたいですね。

 

ちなみに、前に演奏したアリスクーパーはステージ上でのたうちまわったり、枕袋から鳥の羽をぶちまけたりして・・・オマケにプロモーターがバックステージに紛れ込んでいたニワトリをステージ放り込んだり・・・滅茶苦茶なステージで、観客はあっけにとられていました。
なお、アリスクーパーはデトロイト出身だったので、ニワトリは飛ぶもんだと思っていたとかでニワトリを捕まえて客席に放り投げたのですが・・・そのままストンと落下してしまったそうです。
で、アリスクーパーがニワトリの首を食いちぎって死体を投げたという話になったとか・・・当時は、ステージを写すスクリーンなんてなかったから、遠くから見ていたので良く分からず誤解したようです。

 

アリスクーパーのアバンギャルドなステージを見ていたドアーズのジムモリソンは、あいつの後には演りたくないと言ったとか。
結局、トリをつとめたドアーズの演奏は撮影禁止となり、曲順もジ・エンドから始めるようにしたそうです。

 

というわけで、ミュージシャンの演奏を視ることを期待したら今一つですが、苦労してフェスティバルを成功させた物語としては面白い映画です。

 

「平和への祈りをこめて・ライヴ・ピース・イン・トロント1969」

 

DVD スィート・トロント