前回、レスポール氏のカスタムオーダーの2PUでマイクロフォン端子を搭載したレスポールSGカスタムについて書きました。
あのギターには、ネックジョイントが変更され指板エンドとフロントピックアップの間のスペースが無いという特徴もありました。
もちろん、通常のSGのネックはボディから完全に突き出した形状だったので、フロントピックアップの位置を動かす訳にはいきません・・・ネックを深くボディに差し込んだ形でジョイントしてあります。
おそらくネックジョイントの強度を上げるために、このようなジョイント方法にしたのでしょう。
そう、SGの泣き所はネックジョイントが脆弱という点です。
そのため、何度かネックジョイントの形状の変更が行われています。
そもそも、1959年にレスポール・スペシャルがダブルカッタウェイになった時に、ネックがボディから突き出た形にしたため、ネックジョイント部のトラブルが多発しました。
そこで、1959年中頃にフロントピックアップの位置を後ろにズラし指板エンドとの間にスペースを空ける事により強度を確保しました。
ちなみに、この頃ボディ形状は同じながら、名称がSGスペシャルに変更されヘッドのLes Paulの文字も無くなりました。
1960年末にレスポールシリーズ全体のボディ形状がSGシェイプに変更されたのですが、SGスペシャルの経験を活かして指板エンドとフロントピックアップの間にスペースが設けられました。
ちなみに、カスタム、スタンダード、ジュニアはSGシェイプになっても未だレスポールの名称を使っていました。
しかし、ボディ厚が薄くなった事やトレモロ・ユニットを搭載した事により、ネック強度が充分ではありませんでした。
そんなわけで、トレモロを使うとトラブルが起こりやすく、SGでトレモロを頻繁に使うギタリストといえば、デビュー当時のフランク・マリノ(マホガニーラッシュ)位しか思い浮かびません。
この問題は、1966年にワイド・ピックガードになりジョイント位置が変わっても、ネックがボディから突き出た形だったため、解決されず・・・1971年後半に半円形のコントロール・プレート搭載にモデル・チェンジした時、同時にネックをボディに深く差し込むようにジョイントを変更して解決しました。
つまり、レスポール氏が弱点に対応したのと同じ方法をギブソンが採用するまで10年かかったのです。
1973年に半円形のコントロール・プレート搭載が廃止された後もネックをボディに深く差し込まれ、トレモロユニットも標準搭載では無くなりました。
ちなみに、最近のリイシューではヴィンテージの形状を真似てトレモロユニットを搭載しているため、同じ弱点を持っていると推測されます。
で、私はSGのトレモロ・ユニットを使わないため取り外したり、トレモロ・ユニットが外され中古で安く売っている物を見つけて買ったりしています。
1959年初期に作られた物ですが、出荷前にネックジョイントを修正したため1960年に出荷されたもの。
この時期、フロントピックアップと指板エンドの間にスペースが設けられているはずですがスペースが無く、ヘッドにもLes Paulの文字があります。
ネックジョイント強度が弱いのでトレモロユニットが取り外されています。
ジュニアはフロントピックアップが無いため、ネックジョイント強度の問題はありません。
ワイドピックガードでもネックジョイント強度が足りないため、トレモロユニットを外しています。
一時期スタンダードの代わりに登場したデラックスです。
ネックがボディに深く差し込まれジョイント強度が確保されました。
再登場したスタンダードで、まだ指板にバインディングはありません。
ネックは深く差し込まれた形状のままで、トレモロ・ユニットは廃止されています。