ギターマガジン誌は、レスポール誕生70周年の特集でした。
そこで、久しぶりにレスポール・モデルについて書いてみようと思います。
レスポール・モデルの開発について、レスポール氏は自分のアイデアと言っていますが・・・ギブソン社のテッド・マッカ―ティ元社長は、ギブソン社で開発した物をレスポール氏に見せてレスポールの名前を冠する契約をした、と主張が違っています。
なお、マッカ―ティ氏によれば、その時、レスポール氏からトラピーズ・ブリッジとゴールドトップのアイデアを示されたので、そこだけレスポール氏が関わったという事です。
私は、テッド・マッカ―ティ氏の主張が正しいと思っています。
そもそも、レスポール・モデルのデザインはギブソン社に共通する物で、一方のレスポール氏が作ったヘッドレスギター等は全然デザインが異なっています。
また、トラピーズ・ブリッジの下側から弦を通す仕様や、カッタウェイ部のバインディングの下にメイプル材が見えてしまう等の違和感がある部分は、既に一定量製造してしまったギターにトラピーズ・ブリッジを無理矢理搭載したり、メイプルが見えるサンバースト塗装からゴールドトップ塗装に仕様変更した結果でしょう。
設計段階からの仕様であったなら、こんな形にならなかったはずです。
さらに、ギブソン社がレスポール氏の許可を得ずに勝手に仕様の変更やモデルチェンジを行っている事も、レスポール氏が開発段階から関わっていたのなら、あり得ません。
ちなみに、レスポール氏本人は上位機種のレスポール・カスタムが発表されると、そちらを愛用しています。
つまり、ゴールド・トップやトラピーズ・ブリッジは単なるアイデアで、レスポール・モデルを名乗る上で絶対必要な仕様だとは思っていなかったようです。
当然ですが、メイプルトップなんてレスポール氏の拘りだった訳はありません。
恐らくメイプルトップは、音質というより開発段階でのサンバースト塗装の見栄えをよくするために採用されたのだと思います。
だから、ブラックフィニッシュのカスタム(ゴールドトップの一部も)はオールマホガニー製なのです。
また、モデルチェンジしたギターをレスポール氏が気に入らなかったから、契約を更新せずSGに名称変更せざるを得なかったとも言われますが・・・ギブソン社はモデルチェンジ以前からスペシャル等にSGの名称を使っていたので、もとから10年目の契約更新を行わないつもりだったようにも思います。
ちなみに、レスポール氏はカスタムオーダーして、後年のレスポール・パーソナル同様にマイクロフォン端子を搭載した2PUのレスポールSGカスタムを使っています。
気に入ってなかったのなら、わざわざカスタムオーダーするとは思えません。
なお、レスポールが不人気だったからSGにモデルチェンジしたとも言われますが、それはスタンダードの製造本数だけに注目した誤解です。
単に廉価版のモデル・バリエーションが増えたために、スタンダードを購入する人が減っただけ・・・レスポール・シリーズ全体の製造本数は増加の一途だったので、シリーズ全体のモデルチェンジをする理由にはなりません。
おそらく、生産本数の急激な増加により、製造の手間を減らす目的でモデルチェンしたのでしょう。
ちなみに、1959年のレスポールシリーズ全体の生産本数は7828本、1962年のSGシリーズ全体は5935本です。(1960年と1961年はどちらのモデルも混じっています)
良く見ると、左のホーン外側にマイクロフォン端子が増設されています。
また、ネック・ジョイントも変更されていて、指板エンドとフロントPU間のスペースがありません。