中国の農民移住計画

昨日のNHKスペシャルは「巨龍中国 一億大移動 流転する農民工」というタイトルでした。
習近平指導部が掲げる新型都市化計画で、中小都市への大規模な農民の移住が進められているそうです。

この新型都市化計画は、農民を消費者にすることで、2020年にはGDPを倍増することを目的としているそうです。
このため、中国の経済成長を支えていた出稼ぎ農民を、大都市から再開発の名目で退去させる事が行われています。

番組では、出稼ぎ農民に安い食事を提供する食堂に的を絞って、取材していました。
この食堂を営んでいたのも農村出身の一家で、半ば強制的に退去させられていました。
確かに、低賃金で働く出稼ぎ農民の食を支える食堂が無くなれば、食べることが難しくなり、出稼ぎ農民の労働者も大都市から退去せざるを得なくなります。

経済が停滞し雇用が減少したため、農村に戻った農民を待っていたのは、経済成長から取り残され荒廃していた農村の現実でした。
一方、政府が目論む、中小都市は、売れ残ったマンションが立ち並び・・・農民の移住は進んでいません。

中国では、都市住民と農村住民の戸籍が区別されています。
大都市に家を買えば、都市住民の戸籍を得ることができるのですが・・・中小都市では、賃貸住宅でも、都市住民の戸籍を得ることができるそうです。

農民たちは、決断を迫られているのですが・・・結局、食堂の一家は、農村で暮らす事にします。
中小都市ではお店を借りるにも賃料が高いうえに、都市の住民がまばらなので、それほど売り上げが望めないとか・・・一方、大都市に残りたい農民により、住居の価格は高騰してしまっているのです。
そんなわけで「農地があれば食べる事だけはできる」という事で、農村に戻る事にしたのです。

中国政府は、経済優先で、GDP倍増を目指しているそうですが・・・安い労働力で経済成長を支えた農民工、食料を供給する農村を犠牲にして、はたして中国の経済成長があるのか?と思ってしまいました。
はたして、中国の壮大な実験は成功するのでしょうか?
どうも、習近平指導部は強引なやり方のくせに、計画がズサンな感じがします。

そういえば、フィリピンのドゥテルテ大統領の暴言があれこれ言われていますが・・・
南沙諸島問題で、仲裁裁判所の判決で負けて、手詰まり状態の習近平指導部に対して、追い打ちをかけることをせずに、問題を棚上げにして、面目を保たせたのは、賢明な判断だったと思います。
多額の支援を取り付けただけでなく、進出のエスカレートを防いだのですから・・・習近平よりも一枚上手な感じがします。