イスラム経済

昨日は、イスラム教には砂漠地帯による特徴が感じられると書きました。
そこには遊牧民等の部族や隊商などの共同社会を意識した、ザカート税など助け合いの思想が感じられます。

そしてイスラム教世界の経済を特徴づけているのが、利子の禁止です。
これは、神は働かずに利益を得ることは許さないという考えによります。
確かに、お金持ちの人ほど利息で儲けて楽をするというのはおかしい気がします。

はたして、この考えに対して、ケインズだったら何といっただろうか?と考えてしまいます。
貨幣には流動性というものがあります。
例えば、現金でしたら、何か欲しいと思った時、すぐに購入できます。
つまり、買い手から売り手に、すぐに現金は渡ります。
現金を普通預金に預けていたら、欲しい物を買う時に、少し手間取ります。
さらに、定期預金に預けていたら、欲しい物を購入するまで大変です。
このことから、現金は流動性が高く、つぎに高いのは普通預金、一番流動性が低いのは定期預金ということになります。
で、利子とは、この流動性による便利さを犠牲にする対価と考えられています。
だから、現金には利子がつかなく、普通預金は利子が低く、定期預金は利子が高いのです。

もちろん、利子は政府の金利政策でも重要です。
利子率が高ければ、物を購入するのを我慢して銀行に預けようという人が増えますよね。
したがって、物が売れないので安く売る、つまりデフレ傾向になります。
だから、利子が低ければ、銀行に預けずに物を購入してしまうので、物価が上がりインフレ傾向になります。

では、イスラム金融はどうなっているのか?というと
イスラム金融では、預けられたお金を企業等に貸付け、利益が出たときは預金者へ配当するのです。
もちろん、損失が出たときは預金者も損をします。
そして、預金者は利益というよりも、あまっているお金を必要としている企業等に使ってもらいたいという共同体意識で預けるのです。
そして、預金者がどれくらいあまっているお金を預けたいと思うかが、物価に影響するのです。
なお、このイスラム金融は、隊商交易に共同出資していた事が始まりと言われています。

イスラム教は、単に宗教というより、私たちの資本主義とまったく違った経済観があるのには驚かされます。
なんとなく、お金に振り回される資本主義経済よりも、イスラム経済の方が人間味があるような気がしますね。

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イスラム潮流」 NHKスペシャルイスラム」プロジェクト 監修小杉泰 NHK出版