仮想現実

昨日は、シリコン・グラフィックスの創業者のジム・クラークについて書きました。
今になって思うと、シリコン・グラフィックスのワークステーションは、初期のマッキントッシュと同様に、何か夢を与えてくれる雰囲気を持っていました。

特に、シリコン・グラフィックスのマシンがよく使われた、ヴァーチャル・リアリティ・システムは、未来を感じさせてくれました。
当時は、私もわくわくしてヴァーチャル・リアリティに関する本を読んだりしていました。
もっとも、いかに高機能のシリコン・グラフィックスを使ったとしても、リアルタイムで動かせる3D-CGは、簡単な図形を使ったものでした。
現在は、コンピュータの性能も上がったし、高精度のHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)もあるので、もっとリアルな事ができると思いますが・・・最近は、ヴァーチャル・リアリティという言葉はあまり聞かないですね。

ヴァーチャル・リアリティというと、このようなVPL社のジャロン・ラニアーが作った、HMDとデータ・グローブを装着したシステムが頭に浮かびますが・・・
ヴァーチャル・リアリティ=仮想現実という言葉からも判るように、他にも色々な仮想体験をさせるシステムがありました。

例えば、MITが作ったアスペン・ムービー・マップというシステムは、アスペンという街の全ての通りを360度撮影するビデオカメラで記録したもので、好きな道をコンピュータ上で通行できる体験をさせるものでした。
そうです、現在は、Googleストリート・ビューとなって実用化されています。

ヴァーチャル・リアリティに関する本を読んでいて、仮想空間ってそういうことか!と判ったことがあります。
それはM.K.クルーがーという人が書いた「人工現実」という本にあった著者のエピソードです。

著者の子供の友人が電話をかけてきたとき、いつもこう言うそうです。
「お父さん、マイクをここに呼んでください。」
もちろん、その子が言う「ここ」とは、彼の家でも、著者の家の電話口でもありません。
「ここ」とは、その子の家の電話と著者の家の電話を結ぶ回線上にできた、仮想空間なのです。
子供は、ものごとの本質をとらえているのです。
みなさんも、電話に熱中したときに、周囲の事を忘れて、相手が自分の隣にいるような気になることがありませんか?

そういえば、昔、HMDとデータ・グローブのヴァーチャル・リアリティ・システムのデモを試した時、最初はこんなもんかと思ったのですが・・・
もう一人の人がHMDとデータ・グローブを装着して、同じ3D-CG空間で、物を手にとって相手に渡す事をしたら、仮想空間を実感しました。
3D-CG空間では、感触もないし、相手の手しか表現されてなかったので渡すのが難しく、必死になりました。
でも、相手も受けようと努力しているのが感じられて、リアリティ感を感じる事ができたのです。
コミュニケーションって、凄いですね。
たぶん、通信型の対戦ゲームに我を忘れて熱中する人も、仮想空間にいるのだと思います。

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「人工現実」 M.K.クルーがー著 下野隆生訳 トッパン

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「ヴァーチャル・リアリティ」 ハワード・ラインゴールド著 沢田博訳 ソフトバンク

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「ヴァーチャル・ワールド」 ベンジャミン・ウーリー著 福岡洋一 訳 インプレス