ふりだしに戻る

昨日は、広瀬正の「マイナス・ゼロ」を紹介しました。
何故か「マイナス・ゼロ」と一緒に思い浮かべてしまうのが、ジャック・フィニイの「ふりだしに戻る」です。

「マイナス・ゼロ」は単にタイムトラベルのSF小説というだけでなく、、ロマンチックな面もあり、詳細に描かれた過去の世界によるノスタルジア、そして謎解きのミステリーといった要素もあがありますが・・・・
「ふりだしに戻る」も同じ要素があります。
そういえば、なんとなく題名の「マイナス・ゼロ」と「ふりだしに戻る」にも、共通するニュアンスが感じられますね。

もちろん、「マイナス・ゼロ」は過去の東京が舞台なのに対して、「ふりだしに戻る」は過去のニューヨークが舞台です。
共通するのは、それらの過去の街が驚くほど詳細に調べて描かれている点です。
さらに、「ふりだしに戻る」では、過去の写真や絵を使って雰囲気を盛り上げています。
フランスから送られた自由の女神がまだ組み立てられてなくて公園に野ざらしとなっていたり、その情景だけでも、なかなか面白いです。

おおきく異なるのは、「ふりだしに戻る」ではタイム・マシンが登場しない事で・・・
主人公は、過去から変わっていない環境に身を置き、過去にいると信じ込む自己催眠状態になることで、タイムスリップするのです。

偶然にも、この「ふりだしに戻る」は「マイナス・ゼロ」と同じ1970年に発刊されています。
広瀬正は「マイナス・ゼロ」の発刊の僅か2年後に亡くなってしまいますが、ジャック・フィニイは、なんと「ふりだしに戻る」発刊の25年後に続編の「フロム・タイム・トゥ・タイム 時の旅人」を発表しています。
そして、その直後に亡くなっています。
なんとなく、続編を書いた事によって、心残りが無くなったのでは?、なんて思ってしまいますね。

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「ふりだしに戻る 上」 ジャック・フィニイ著 福島正実訳 角川文庫

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「ふりだしに戻る 下」 ジャック・フィニイ著 福島正実訳 角川文庫

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「フロム・タイム・トゥ・タイム 時の旅人」 ジャック・フィニイ著 朝倉久志訳 角川文庫