引き続き、米朝首脳会談について

昨日は、合意なしで終わった米朝首脳会談について書きました。
最初からトランプ大統領は、交渉で優位に立つために、途中で席を立つ事も計算していたのではないでしょうか?

その後、北朝鮮は完全な経済制裁解除ではなく、一部の解除を要求したという、異例の記者会見を行いました。
おそらく、トランプ大統領の会見のままだと、一方的に金正恩委員長が過大な要求をした悪者になってしまうと判断したからでしょう。
多くの解説者が言う様に、実態は一部ではなく多くの解除の要求を北朝鮮が行ったため、米国側はこれでは完全な解除とほぼ同じだという風に理解したといったような事だと思います。

このような事態になったのは、金正恩委員長がトランプ大統領を甘く見ていたからだと思います。
もちろん、一部で指摘があったように、前回の会談での態度から、簡単に言い含められる相手で、恐れるに足りないという印象を受けていたのかもしれません。

それよりも、事前の報道から、トランプ大統領が全米での評価やノーベル賞目当てで、会談に前のめりになっており、簡単に譲歩してしまう可能性に期待していたのでしょう。
しかし、実態は、会談が合意なしで終わっても、そんなにトランプ大統領は困らなかったのだと思います。
つまり、政治的な影響を考えればノーベル賞もそんなにまでして欲しくもないし、北朝鮮の過大な要求をしたからという理由にしてしまえば、むしろ、簡単に譲歩しなかった方が評価が上がるからです。
おそらく、会談での合意がなかったことよりも、コーエン氏の公聴会での発言の方が、トランプ大統領には痛かったと思います。

それに対して、実は、金正恩委員長の方が弱い立場で、会談での成果が欲しかったのだと思います。
国民の前で、今後は、核開発や軍事力増強から、経済発展に舵を切ると宣言してしまったからです。
そして、多くの軍人が製造現場に派遣されたため、軍隊の幹部には不満が溜まっているという話もあります。
歳が若い事もあり、先軍政治を進めた先代の金正日の方が良かった、と言われる事は絶対に避けたいでしょう。
だから、少しでも経済制裁の解除が欲しかったはずです。

今まで、周囲が守ってくれて、大きな挫折も味わっていなかったのに、今回は会談の主役として、はじめての失敗となってしまいました。
わざわざ長距離の列車の旅をしてきたのに、手ぶらで帰らなければならない状況で、その心中はどんなでしょうか?