クリスティーナの世界

昨日のNHK日曜美術館は「ワイエスの描きたかったアメリカ」というタイトルでした。
アンドリュー・ワイエスは好きな画家なので、興味深く拝見しました。

トランプ大統領による白人至上主義のような差別に対して、特集を組んだような感じで・・・ワイエスが移民の姿を描くことに、移民の手によって作られたアメリカという事を表現したかったという内容でした。

しかし、私の感じでは、ワイエスはそんな強いメッセージを持っていたように思えません。
ワイエスは、移民とかをそんなに強く意識せずに、単にアメリカらしい光景を描いたのですが・・・結果として、そこに、多くの移民が描かれてしまったというような気がします。

おそらく、ワイエスの周囲で、古いアメリカの生活を維持していたのは、裕福な人では無かったので、移民やその子孫が多かったのでしょう。
だから、「アメリカ人にアメリカとは何かを示したかった」というワイエスの言葉は、素直にそのまま受け止めた方が良いと思います。

もっとも、私の解釈が間違っている可能性もあります。
番組でも取り上げられていた、代表作「クリスティーナの世界」ですが・・・描がかれたアンナ・クリスティーナ・オルソンは、足が不自由で這って進む事しかできなかったそうで、当時55歳だったそうです。
そして、ワイエスは「大部分の人が絶望に陥るような境遇にあって、驚異的な克服を見せる彼女の姿を正しく伝えることが私の挑戦だった。」と語っています。

しかし、私が初めてこの絵を見たときには、置いてきぼりにされた若い女性のように思えたのです。
そして、その姿には、深い悲しみを感じたのですが・・・まるっきり、違っていましたね。

なお、私がワイエスの絵を好きな理由ですが・・・古きアメリカが描かれているというだけでなく、物の存在感が見事に描かれているからです。
番組でも、クリスティーナが住んでいた、オルソンハウスの絵について話していましたが・・・そのような、人の存在を感じさせる絵だけでなく・・・人の存在感をまるっきり排除した、単に岩だけを描いた絵にも感じられます。
これは、絵の脇役的な物・・・例えば「クリスティーナの世界」に描かれる遠くの建物(オルソンハウスや納屋)にも、写真では感じられない、一種独特な存在感が感じられるように思えます。

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ワイエス講談社 現代美術第3巻

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アンドリュー・ワイエス 創造への道程」展 図録

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「ANDREW WYETH AUTOBIOGRAPHY」洋書

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アンドリュー・ワイエス水彩素描展 丸沼芸術の森所蔵」図録