数字化で失われるもの

終戦の日が近いという事もあり、ここのところ太平洋戦争を扱った番組が多いです。
昨日のNHKスペシャルは「本土空襲 全記録」というタイトルでした。

先日放送されたNHKスペシャルの「原爆死 ヒロシマ 72年目の真実」は、原爆被爆者動態調査の記録などビッグデータを航空写真に重ねて分析もので・・・全体的な視点と個々の事例の視点が、バランス良くまとめられていて、素晴らしい番組でした。

昨日の番組も、米国に保管されていた戦闘機のガンカメラによる映像等の記録から、日時・場所・被害について資料と映像をデータ化し、本土空襲マップを作製したというので、期待して拝見しました。
しかし、全記録というだけあって、全体的な視点に偏った内容で、個々の事例はパイロットの証言ぐらいで・・・ちょっと期待外れでした。

そもそも、日本各地で行われた空襲については、断片的な記録で語られるだけなので、全体像を把握することが目的というので・・・全体的な視点になるのは、当然です。
その結果、空襲:2000回、犠牲者:459564人、焼夷弾:2040万発、銃弾:850万発だったということが判明したそうで・・・その数字の大きさに驚かされます。
しかし、数字化されてしまうと・・・実感に欠けてしまい、どこか遠い世界の出来事のように思えてしまうのです。
もっと、個々の悲惨な事例が紹介されて、同情というか共感させるような配慮が必要な気がします。

僅かに実感を覚えたのは、ガンカメラの映像で、実弾を避けて逃げる人々の姿が映し出された時ですが・・・それも、ゲームの映像のような感じでした。
米軍の元パイロットが、臨機目標として地上の動くものを撃っているだけで、民間人を殺しているという感覚が無かった、と言っていたように・・・個々の事例の悲惨さを感じさせるには、物足りないものでした。

もちろん、断片を集めて数字化する事も大事ですが・・・膨大な映像などを集めたのなら、数字に表せないものにまとめる事にも取り組んで貰いたいです。