ノー・ディレクション・ホーム

先日、ミック・ロンソンがボブ・ディランのローリング・サンダー・レヴューに参加した事を書きました。
で、久しぶりにローリング・サンダー・レヴューのCDを聴いたのですが・・・これは、ブートレッグ・シリーズの第5弾である「BOB DYLAN LIVE 1975」というものでした。

その時、ちょっと気になっていたのが、同じブートレッグ・シリーズの第7弾である「ノー・ディレクション・ホーム:ザ・サウンド・トラック」で・・・今日、こちらも聴き直してみました。
その名前の通り、マーティン・スコセッシ監督の映画「ノー・ディレクション・ホーム」のサウンド・トラックなのですが・・・ブートレッグ・シリーズというように、海賊版にしか収録されていなかったデビュー前からの貴重な音源等が収められているアルバムです。

・・・で、このアルバムの最後が有名な1966年5月17日フリー・トレード・ホールでの「ライク・ア・ローリング・ストーン」の演奏になっています。

演奏を始める前に「ユダ!(裏切者)」という観客からの声に対して、「お前なんか信じない・・・お前は噓つきだ」と答えるのですが・・・
それまでのアコースティック・ギターの弾き語りから、バックバンド(この時はザ・バンド)を従えたエレキギターの演奏をするようになり、フォークからロックへ転向し商業主義に走ったと非難されていた時期を象徴する音源となっています。

ちなみに「ノー・ディレクション・ホーム」とは、「ライク・ア・ローリング・ストーン」の歌詞の一節で、帰り道が無いという意味になります。
そして、映画では、エレキが不良の象徴だった時代に、フォークの貴公子だったボブ・ディランがロックを演奏するようになった時の、世間の拒絶反応がメインに扱われています。

1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで、初めてバターフィールド・ブルース・バンドをバックに演奏したときは、大ブーイングの嵐・・・フォークの大御所のピート・シガーは斧を持ち出して、ケーブルを切ろうとして取り押さえられたりします。
結局4曲演奏しただけで早々とステージを降りたのですが・・司会が困って「アコースティック・ギターを取りにいっただけです」とアナウンスしたので、しかたなく再登場してアコースティックの弾き語りを演奏しました。

当時、仲の良かった(付き合っていた?)フォークのプリンセスであるジョーン・バエズなんかも、堕落したと思っていたそうですが・・・今となっては、ボブ・ディランが正しかった事を認めています。

「ユダ!」とののしられたフリー・トレード・ホールでは、「でかい音でいこう」とバンドに言って演奏をはじめます。
この、非難をものともせず信念を貫き通す姿勢のカッコ良さ・・・どっかの政治家にも見習って欲しいですね。

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ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム」 パラマウント・ジャパン