イエスの生涯

昨日は、アンベードカルの「ブッダとそのダンマ」について書きました。
この本は、現代のインド人に仏教を広めるために、奇跡や成仏往生などを排除してお釈迦様を描いているのが特徴です。

そこで思いだしたのが、同じように奇跡や神の子などの超自然的な面を排除してイエス・キリストを描いた、E・ルナンによる名著「イエスの生涯」です。

ブッダとそのダンマ」が書かれたのが1957年なのに対して、「イエスの生涯」はほぼ1世紀前の1963年に発刊されています。
産業革命によって近代化が始まり、自然科学が発達し始めたとはいえ、まだまだ中世の宗教的な色合いが濃く残っていた時代だったことを考慮すると、当時の社会に与えた衝撃はかなり大きかったことが想像できます。
(宗教界からは猛反発を食らったようですが、一方で、進歩的な人達は熱狂的に迎え入れられたらしい)

ところで、長い歴史と伝来の道のりによって、現在の日本仏教は、お釈迦様が説いた原始仏教と大きく変わってしまっています。
同じように、キリスト教もイエスが説いたものとは変わっていると言われています。
そういえば、旧約聖書になりますが、紀元前に書かれた死海文書が1947年に発見されて、現在の伝えられている物がかなり変わっていることが判明しています。
(公表される前に一部で言われたような、バチカンの権威をひっくり返すほど、変わってはいませんでしたが・・・)

これに対して、イスラム教では、(建前ですが)クルアーンムハンマドが大天使ガブリエルから聞いたままとされ、ムハンマドが聴いたアラビア語以外も認めていません。
また、教会等による権威付け等を嫌って、神父、牧師や僧にあたる存在がありません。
あるのは宗教学者のようなな、宗教指導者といわれる存在だけです。

この点について私は、教祖が説いたオリジナルの宗教も大事だと思いますが、時代や風土に合わせて変化した宗教も大事だと思っています。
(例えば、原始仏教もありだし、現代の日本の仏教もありだと考えています)

ですから、現代インドの状況に合わせた「ブッダとそのダンマ」も素晴らしいし、近代的な価値観を持ってイエス・キリストを見直した「イエスの生涯」も素晴らしいと思います。

現代人には、「イエスの生涯」のように、普通の男が奇跡もなく、単に「愛」を説いて周ったと言う方が、嘘っぽくなくて共感できるのではないでしょうか?

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「イエスの生涯」 E・ルナン著 忽那錦吾/上村くにこ 訳 人文書院