ブッダとそのダンマ

昨日は、インド独立の父と言われるガンジーについて書きました。
でも、御存知のように、ガンジーが望んだ形ではインドは独立しませんでした。

ガンジーと共にインド独立運動を指導した人には、ネルーとジンナーの二人がいましたが・・・
第二次大戦後が終わって、いざ独立が実現しそうになると、ヒンドゥー教徒の代表のネルーイスラム教徒代表のジンナーが対立し、結局、インドとパキスタンに分かれて独立したのです。

そのため、インド初代首相はガンジーではなくネルーとなったのです。
そして、このネルー内閣で初代法務大臣となったのが、ガンジーがハリジャン(神の子)と呼んだ不可触賎民出身のアンベードカルです。
そのため、彼の尽力によって制定されたインド憲法では、不可触賎民制度の廃止がうたわれています。

しかし、なかなか不可触賎民の差別はなくならなかったため、アンベードカルは不可触賎民50万人とともに、ヒンドゥー教から仏教へ改宗します。
これが、現代のインドにおける仏教復興運動の始まりとなります。

その彼が、仏教の初心者向けに書いたのが、名著といわれる「ブッダとそのダンマ」です。
以前も書きましたが、日本の仏教は、伝来の間に原始仏教とは大きく異なってしまいました。
しかし、仏教発祥の地であり、昔からの経典も残っていて、もちろん翻訳も必要ないということもあるので、この「ブッダとそのダンマ」は原始仏教に近いように感じます。

もっとも、アンベードカル独自の解釈も多く書かれていますので、本来の仏教とは異なるという批判も多い本です。
この点については、本書の後書きに「もし世尊仏陀が現在の世にいたとしたら、まさにこのような教えを説いて遊行したであろうと思う。」と書かれていますが・・・
もともと、現代のインド人に仏教を広めるという目的を達成するために書かれた本なのですから、これが、現代のインドの状況を反映した、インド人の解釈による仏教と考えれば良いと思います。

そして、奇跡や成仏往生などを排除して、ダンマ(人と人との正しい関係)を説いた一人の人間としてお釈迦様を扱っているので、私たちのような現代の日本人にも理解しやすい仏教入門書だと思います。

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ブッダとそのダンマ」 B.R.アンベードカル著 山際素男約 光文社新書

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「中公バックス 世界の名著 77 ガンジー ネルー」 蝋山芳郎責任編集 中央公論社
ガンジーの「自叙伝」とネルーの「自叙伝」を一冊にまとまた本)