隣家の記憶

先日も書きましたが、隣の家が引っ越しました。
そして、今日から解体工事の業者が作業を始めたようです。

隣の家のおばさんには、いつも認知症の母が世話になっていて・・・母には、以前から引っ越すという話はしていたのですが・・・ちゃんと認識したら悲しむのではないか?と、心配していました。
ところが・・・今日、デイサービスの人が迎えに来た時に、隣家の解体の様子を見て、「さびしくなるわね」と、言ったそうです。
意外と、母は冷静に受け止めたみたいで、ちょっぴり安心しました。

我が家の辺は、昭和30年代の新興住宅街で・・・大体、近所は同じような世代の人が住んでいたのですけど・・・隣の家は、私の父や母より一世代上の夫婦が住んでいました。
子供の頃の記憶では、我が家より一回り大きい家に、老夫婦と勤め始めた息子が住んでいる、というものでした。

やがて、その息子さんが結婚して、お嫁さんがきて・・・そして、男の子の孫が生まれたので、老夫婦と若夫婦、そして孫という感じで、かなり賑やかな家族という印象が強かったです。

その頃、私の父が死んだのですが・・・葬式の準備なんかでも、散々、隣家の方々のお世話になりました。

その後、隣家の老夫婦も、相次いで亡くなって・・・・孫も成人して結婚し、家を離れて行ったので・・・息子夫婦が住んでいたのです。
その息子も定年退職して、しばらくした頃・・・気が抜けてしまったのでしょうか、駅の階段でぼんやり降りていたら、後ろから押されて、転げ落ちて怪我をしてしまい・・・その後、家で療養していたのですが、元気になる事も無く、亡くなってしまいました。

結局、息子の嫁さんが、一人で住んでいたので、母が認知症になる前から、良い話し相手だったのです。

そして、その息子の嫁さんも、かなり歳をとってきたので、家を出て結婚していた孫が引き取ることになったのです。

もぬけの殻になって、窓やドアが外された隣家の建物を見ていると、隣の家族の歴史を思い出して・・・諸行無常だなぁ・・・と、感慨にふけっています。