テレビの影響力

昨日は、東京都美術館の「若冲展」の入場が320分待ちになった事について書きました。
テレビで取り上げられた事などにより、若冲ブームが起きたようですが・・・そんなに待つだけの価値があるのかは疑問ですね。

そういえば、昨日のNHKスペシャルは、「そしてテレビは”戦争”を煽った ~ロシアVSウクライナ 2年の記録~」というタイトルで・・・テレビによる影響力が取り上げられていました。

2年前 それまでのロシヤ寄りのヤヌコーヴィッチ政権が失脚した政変により、欧米寄りの新政権が発足した事に対するロシアによるクリミア併合が発端となり、2,000人以上の死者が出る戦争状態が続いています。
政府の強い統制化に置かれていたロシアのテレビ局が、プーチン政権寄りの報道を続けたの対して・・・それまで、ウクライナのテレビ局は独自の放送を行っていたのですが、国内のロシアへの反発が高まるにつれて、ロシアに対抗する放送を行う様になってきたそうです。

この点について、ロシアのジャーナリストが「世界のジャーナリズムにおいて報道の客観性なんていうものはもはや存在しない」と言うのに対して、ウクライナのジャーナリストは「祖国が危機に陥るにつれて、国を思う感情を抑えられない」と話していました。
それまで、世界各国の紛争地で取材を続けていて、対立する双方から話を聞くことを大切にしていたそうですが・・・従軍取材が増えるにつれて、兵士と同じ気持ちになっていったそうです。

この結果、ウクライナ東部のルガンスクで、大規模な爆発が起きた時には、ウクライナの放送局は親ロシア派による砲撃と報道したのに対して、ロシア国営テレビはウクライナ軍による空爆というように、まったく違う報道をするようになり、国民の対立の感情を煽るようになりました。

ウクライナの放送局に努めている息子が事件の起きた現地にいたのに、離れて暮らす、ロシアのテレビを見ている父親は、息子の言う事を信じないようになってしまった、なんていう例が紹介されていました。

今の時代、インターネットで情報が流通するので、テレビの影響力がそれほどあるのか?と、思ったのですが・・・
オデッサで起きた、反ロシア住民と過激なロシア系住民の衝突の時に、ロシア系住民が立てこもった建物が炎上した事件で、ロシアはのテレビ局は現地にいかず、インターネット上の映像を使って、ウクライナ民族主義者が犠牲者を侮辱しながら撮影している様子だと報道したそうです。
しかし、実際は、ロシア国籍のフリージャーナリストが撮影した映像を、本人に連絡もせずに勝手に使ったものだったどか・・・
また、父親を捜すため建物に入った女性が撮影した、54歳の女性の遺体を、ロシアのテレビ局は妊婦が殺されたと報道したそうです。
もちろん、妊娠なんかはしていなかったそうで、世界に真実を伝えなければならないと思って、インターネットにアップした画像が、数秒後には、「妊婦だ!」「妊婦が殺された!」とコメントがついて、世界中に広まってしまったとか・・・
そして、それらの映像を見た多くのロシアの若者が、志願兵となり、ウクライナ東部の戦闘に参加したそうです。

なお、このオデッサの事件では、ウクライナ系住民が、逃げ遅れたロシア系住民を必死で助けようとしていた映像もあったそうですが、伝えられなかったそうです
ロシアのインターネット系ジャーナリストは「映像をどう使うかはジャーナリストの良心の問題なのです。多くのジャーナリストは責任を負っていません。」と言っていましたが・・・テレビが世論を変え、世論がテレビを変えるという状況・・・報道を疑う気持ちも忘れない、見る側の心構えも重要だと思いました。

もちろん、テレビで取り上げられたことにより、「若冲展」に長蛇の列ができる日本も、他人事ではないですね。