人工知能とサイバー戦争

昨日は、一昨日放送されたNHKの「SFリアル サイバー戦争の世紀」について書きました。
優秀な技術者というのは、案外、純粋な人間が多いので、国家とかに操られやすいような気がします。

昨日のNHKスペシャルは、「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」というタイトルで人工知能を取り上げていました。
2夜続けて、最新のコンピュータ技術分野で、社会を大きく変える事を取り上げた、と言えるでしょう。

SFリアルでは「人類は、核兵器につづく新たなる攻撃兵器を手にした」という言葉が印象的だったように、今回のNHKスペシャルでは「人類にとって火や石器の発明、産業革命にも匹敵するという人工知能の進化」という言葉が印象に残りました。

例えば猫を識別するのに、従来の人工知能は、エキスパート・システムのように、「髭がある」というような猫に関する情報を沢山覚えこませるのですが・・・最近のディープ・ラーニングといわれる人工知能ビッグデータを扱えることにより、多くの猫の画像からコンピュータ自身が猫の特徴を学習するという手法になっています。
これは、人間の脳がが猫を識別できるようになるのと、同じ手法といえます。

タイトルの様に棋士羽生善治によってストーリーを展開していくのですが・・・羽生さん自身が興味を持っているのが良く判り、コメントも的確でなかなか深い物でした。
例えば、人間も機械もつきつめれば物質に過ぎない、機械に心を持てない理由はない、という点について・・・「何をもって知性とする、何を持って生命とする、何をもってひとつの答えとする」「線引きをどうやってすればいいのか全然判らない」という指摘をします。

さらに、人間の脳特有のひらめきや直感という機能・・・これも、コンピュータが多くの経験をつむことにより得られるようになるそうですが・・・・
羽生さんによると「将棋は強くなると沢山の手を考えなくて済むようになる・・・沢山の手が読めるから強くなるわけではない」という事でした。

番組の中で、興味深かったのは・・・人工知能に、思いやりや社会性を持たせようとする試みです。
青いロボットがタワーを作るところを赤いロボットに見せた後に、タワーを壊すように赤いロボットに命令すると、仲間が作ったものだからと命令に従おうとしないのが、面白かったです。

一昨日のSFリアルが悲観的な内容だったのに比べると、今回のNHKスペシャルは楽観的でしたが・・・
優秀な技術者というのは、案外、純粋な人間が多いので、国家とかに繰られ易いのを考えると・・・人工知能はもっと純粋なのが気になります。

人口知能は、開発者本人にもその進化を説明できない状態となっていて、「数学的処理をしているのには違いないのですが、まるで魔法を見ているようです」という言葉も印象的でしたが・・・なんか、制御方法や悪意のある人間から守る手段など、まだまだ充分でないような気がします。

番組では「未来はすでに始まっている」という言葉で終わりますが・・・一昨日のSFリアルで取り上げた映画「ウォー・ゲーム」では、サイバー戦争のシミュレーションの結果、最後にコンピュータがこう言います。
「このゲームに負けない唯一の手段は、ゲームを始めない事です」
ひょっとしたら、人工知能パンドラの箱を開けてしまったのでは無い事を祈ります。