向井潤吉

一昨日、NHKの日曜美術館で向井潤吉の特集をやっていました。
向井潤吉は、母が好きな画家なので、興味深く視ました。

認知症の母が元気だった頃に付き添って、世田谷美術館分館の向井潤吉アトリエ館へ行った事が何度かあります。
番組でも映像が流れていましたが・・・向井潤吉アトリエ館は、その名前の通り、アトリエを兼ねた旧宅を美術館へ改装したものです。
東急世田谷線松陰神社から徒歩17分ということなので、当時の母でも少し遠い距離だったように思います。

ご存知のように、向井潤吉の絵は、民家の絵で有名です。
戦後、急速に失われてしまった日本各地の伝統的な民家の絵は、歴史的資料としても価値があるようです。

たぶん、母にとっては、昔懐かしい風景だったから、好きだったのだと思います。
もっとも、私にとっては、絵は素晴らしいとは思うのですが・・・民家の記憶なんてそんなに無いし、特に好みのタイプの絵という訳でもないので・・・向井潤吉アトリエ館へ行ったときは、ちょっと退屈だった記憶があります。

日曜美術館では、向井潤吉は、民家の雰囲気や、四季の感じを出すために、実際に現地に行って描く事に拘っていた、という話をしていました。
その反面、背景を青空から曇り空へ変えたり、舗装道路や電柱を描かなかったりしていた、という話もしていました。
まあ、画家がアピールしたい点のために、実際の風景と異なったように描く事は良くあるのですが・・・

以前から何度か書いていますが、私は全ての物に魂が宿っていると考えています。
特に、人間が愛用していた古い道具なんかは、人間の心に訴えてくるものがあるような気がします。
それは、飼いならされたペットが、人の心を理解するようなものだと思っています。

で、民家というのは、人間が愛用した古い道具の大きなものであって、向井潤吉は、その民家が人間の心に訴えてくるものを描こうとしていたのではないか?・・・・という事に、番組を視ていて、気が付きました。
だから、現地に行くのに拘ったのは、その訴えかけてくるものを感じ取るためだったのではないでしょうか?
四季の感じなんかは別に重要ではなく、空模様とかを変えても、民家の持つ魂の存在感を表したかったのだと思います。

そう考えると、改めて、向井潤吉アトリエ館へ行ってみたくなりました。

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世田谷美術館分館 向井潤吉アトリエ館」パンフレット

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母の部屋に飾ってある向井潤吉の版画