ニュルンベルグ裁判

昨日は、極東国際軍事裁判東京裁判)のA級戦犯について書きました。
A級戦犯については、連合国がナチス・ドイツを裁いたニュルンベルグ裁判が元になっています。

このニュルンベルグ裁判を行うに当たって米英仏ソによって作られたのが、国際軍事裁判所憲章という法律です。
1945年8月にロンドンにおいて、上記の4カ国によっ調印されたので、ロンドン法とも呼ばれています。

昨日も書いた、A:平和に対する罪、B:通常戦争犯罪、C:人道に対する罪は、この法律で規定されています。
ちなみに、C:人道に対する罪は、ナチス・ドイツによる大アウシュビッツ等の大量虐殺行為を想定していて、極東国際軍事裁判では適用されませんでした。
南京大虐殺も交戦法違反としただけで、適用されなかったそうです)
また、第一次世界大戦等等の過去の事例では、平和に対する罪や人道に対する罪で処罰された事はありませんでした。

以前紹介した、ジョン・F・ケネディが描いた「勇気ある人々」という本には、このニュルンベルグ裁判での判決について、事後法での裁判で「法の不遡及」違反として異議を唱えたロバート・A・タフト上院議員が取り上げられています。

タフト上院議員は「われわれには、わが国民に対して、自由と正義という高潔な原理原則を教える資格がない」「気高い責任がある、それは人々の心に、法のもとでの平等な裁判に徹する気持ちを呼び戻すことだ」と演説をしたのですが・・・

「世界にあれほどの苦痛をもたらしたナチの指導者に対して、誰も同情できるわけはないだろう」とか、
「実際に戦った人たち、あるいは身内が闘い、場合によっては戦死した悲しみを背負った人たちは、戦争を目にした事もない一介の政治家によるその見事な言動に軽蔑の眼差しを向けた。」とか、
「タフトは技術的には正しいのかもしれない、とはいえ、歴史始まって以来、最悪の殺し屋集団を世界中に解き放とうとしているのではないか」等と、猛反発を受けてしまいました。
結局、タフト上院議員の異議は顧みられず、判決通り死刑は執行されてしまいます。

後に、最高裁判所判事ウィリアム・O・ダグラスは「裁かれたナチの犯罪は、これまで、われわれの法的規範が要求している厳格さに基づいて犯罪として認められたこともなければ、非合法だとして国際社会から死刑を言い渡されたこともない、そんな犯罪だ。われわれの規範に従って考えれば、それは事後法によって犯罪とされたものだ。ゲーリングやその他の人たちには、たしかに厳しい処罰が相当だった。けれども、彼らに罪があるからといって、それが、われわれが正義になり代わって力を行使する正当な理由にはならなかったはずだ・」と、述べています。

戦後すぐの事であり、悲惨な経験から感情的になってしまうのは、無理もないことだと思いますが・・・
タフト上院議員のように、理性を忘れずに主張することは素晴らしいと思います。
おそらく、ジョン・F・ケネディもそのように思っていたから、本の中でとりあげたのでしょう。

なお、極東国際軍事裁判においても、インドのパール判事のように、感情にとらわれずに、事後法をもって裁くことは国際法に反すると全員無罪を主張した人がいたことも忘れてはいけません。