ギブソンのプライウッドを使ったアコギ

前回、人間の脳はの記憶を美化するという事を書きました。

ロシアの人がソ連時代を懐かしがったり、日本でも年配の人が昭和を懐かしがりますけど、冷静に考えれば、そんなに良い時代でなかった事が判ります。

昔の曲には良い曲が多かったと言いますが、記憶に残るような曲は名曲であり、本当は駄作も多くあったのが判ります。

私が学生の頃、よく中古のレコード屋に行きましたが、有名なレコードは僅か(さらに高価)でした。

 

さて、ヴィンテージ・ギターは素晴らしいですが、もちろん当時は駄作がありましたので、残っているのは素晴らしいギターが多い・・・単純に、そうとは言い切れない点もあります。

よく言われますが、昔は良い木材が安く手に入ったとか、経年変化で木が枯れた状態になり音が良くなるとか、昔は木工職人の技術が高かったなんていう理由もあります。

 

さらに、多くの人が見落としていますが、昔のギターは高価だったという理由も有ります。

戦前のブルースマンが、ギブソンは高価なのでカラマズー等を使ったという話は有名ですが、貧乏だったとはいえレコーディングをするミュージシャンであり、商売道具のギターには金をかけていたはずです。(だからカラマズーでも良い音がするのです)

ギブソンのSJ-200やマーチンのD-45は、当時の価格は同じ200ドルですが、今の感覚でいうと1000万円近かったのです。
そう考えれば、何故100台未満しか製造されなかったのか理解できるはず、超一流のスターか大金持ちしか買えなかったのです。

 

戦後は安くなったとはいえ、1965年の時点では大卒初任給は2万円でしたが、銀座の楽器店でのストラトキャスターの販売価格は177,000円でした。

高価だったため、生産本数も多くありませんでした。バーストが2,500本なんて言っていますが・・・リバース型とノンリバース型を合わせたファイヤバードⅦの生産本数は僅か388本・・・高価なフルアコ等では、さらに少ない物もあります。

ちょっとした限定販売で500本も作ってしまう現在とはくらべものになりません。

生産本数が少ないため、時間と手間をかけて製造していたのです。

 

さて、ギブソンは1970年前後に、良質の木材が入手できなかった対策と思われ、ハカランダやフレイム・メイプルのプライウッド(合板)を使ったアコギを製造しています。

J-160Eやフルアコ等ではハウリング防止のためプライウッドを使っている事から判るように、鳴りといった点ではマイナスですが良い音がします。

意外と知られていませんがJ200やDOVEにも稀にプライウッドを使ったものがありますけど、弾き比べなければ判らないです(ボディ内部と外側の木目が違うので判別できるのですが、気づかないオーナーもいます)。

このことから、単純に昔は良い木材が手に入ったから素晴らしいギターが多いとは言えないですね。

 

ギブソン ヘリテイジ 1969年製 

サイド&バックはハカランダ合板・・・鳴りは今一つですがハカランダの音がします。

1965年の登場時はハカランダ単板でしたが、やがてハカランダ合板が混じるようになり、1968年にヘッドにフラワー・インレイが入るようになってからは、ハカランダ合板かインディアン・ローズウッド単板になり、1970年のアジャスタブル・ブリッジ廃止以降はインディアン・ローズウッド単板です。

 

ギブソン ブルーリッジ 1969年製

サイド&バックは外側ハカランダで内側メイプルの合板・・・メイプルの音がします。

こちらも1970年以降はインディアン・ローズウッド単板になります。

 

ギブソン ジュビリーDX 1969年製

LGシリーズと同じサイズの1969年登場のスモール・ドレッドノートです。

サイド&バックはハカランダ合板でしたが、1970年に製造終了になっています。